レオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展に行ってきました
京都文化博物館で開催されている、東京富士美術館の企画による「レオナルド・ダ・ヴィンチと『アンギアーリの戦い』展」に行ってきました。
タイトルにある「アンギアーリの戦い」とは、レオナルド・ダ・ヴィンチが持てる力を尽くして制作にあたった大壁画のこと。
しかし未完に終わり、壁画も失われてしまったという、謎の作品です。
その幻の壁画を知る重要な手掛かりとされるのがこの展覧会の中心となる「タヴォラ・ドーリア」で、これは「アンギアーリの戦い」の主要場面の1つである「旗幟の戦い」を描いた板絵。
(「タヴォラ・ドーリア」はレオナルド・ダ・ヴィンチの作品ではないという説がありますが、ここではその真偽には触れません)
イタリアの国宝「タヴォラ・ドーリア」が日本で公開されるのははじめてで、次があるかどうかもわかりません。
このチャンスを逃すわけにはいかず、なるべくすいていると思われる平日を狙いました。
入場に少し並びましたが、館内はそれほどすし詰めではなく、ゆっくりと「タヴォラ・ドーリア」をはじめ、美の歴史に光る至宝70点を堪能することができました。
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さて、モナリザと並ぶ名画と言われている「タヴォラ・ドーリア」が、今回どうして日本で公開できることになったのでしょうか。
これには興味深いエピソードがあり、以下に紹介したいと思います。
まず「タヴォラ・ドーリア」という名前は、「ドーリア家に伝わる板絵」という意味で、ジェノバの貴族・ドーリア家が所有していた秘蔵の名品でした。
1941年の発令に従い政府の管理下におかれていましたが、違法(盗難らしい)な経緯で国外に流出され、個人コレクターの間を転々としたようです。
それが1992年にミュンヘンから日本に輸出し、古物商から正統に購入したのが「東京富士美術館」だったのです。
しかし、イタリア当局は不法に国外に持ち出されたとして返還を求め、長期間にわたって話し合った結果、2012年に富士美術館はなんと、イタリア共和国に寄贈したのです。
こんな大ニュースが、なぜ日本で報道されなかったのかが不思議ですが、イタリア政府は、その見返りとして、「タヴォラ・ドーリア」を所定の期間貸与され、日本で展覧会を開催することが可能になりました。
数奇な経緯をたどったため、「タヴォラ・ドーリア」はその存在が知られながら、展覧会等で人々が観覧する機会が長らくありませんでした。
しかし、富士美術館の英断によって、この名画が多くの人が観覧できるようになったという事実は、日本人として、誇れることではないでしょうか。
「一流の芸術を広く人々のために」
これは、富士美術館の創立者である池田氏の理念です。
「タヴォラ・ドーリア」は不法に入手したものではないので、富士美術館はイタリア共和国に、高額で販売することも可能だったでしょう。
しかし、潔く寄贈したのは、創立者のそのような理念が反映されていたのではないでしょうか。
もし販売という形で返還されたとしたら、専門家の研究の対象として厳重に保管され、一般の目に触れる機会はほぼなかったでしょう。
芸術のなんたるかを分からない私ですが、こうして直に目にすることができ、少なからず感動することができたのも、富士美術館に「一流の芸術を広く人々のために」との理念が生きているおかげだと、思えてなりません。
損得勘定ばかり横行する中で、良い話だと思い、紹介させていただきました。
<データ>
レオナルド・ダ・ヴィンチと 「アンギアーリの戦い」展
~ 日本初公開「タヴォラ・ドーリア」の謎~
~ 日本初公開「タヴォラ・ドーリア」の謎~
会 期:
平成27年8月22日(土)~11月23日(月・祝)
会 場:
会 場:
京都文化博物館 4階・3階特別展示室
主 催:
京都府、京都文化博物館、京都新聞
企 画:
東京富士美術館