橋下氏の慰安婦発言をどう見るか
なにかと話題となる、日本維新の会共同代表、橋下徹大阪市長ですが、今回の「従軍慰安婦発言」も、大きな物議をかもし出しています。
5月24日に予定していた、元慰安婦との面談も突如中止になりましたが、面談の要請をしていたのは元慰安婦の方でした。
ところが、申し入れをした元慰安婦の方が、当日になってキャンセルしたのです。
突然の中止についてニュースでは
元慰安婦の支援者団体は
「わたしたちは、その場しのぎで臨機応変に、術策を変える橋下市長に会う価値も理由もないと判断しました。橋下市長との面談を拒否します」
「(元慰安婦2人の直接の言葉はどういうものか?)(橋下氏の)発言をテレビで見た時に、『口をねじってやりたい』と。『会って何を言うんだ』ということを、おっしゃってたそうです」
と話した。
と報道していましたが、「その場しのぎで臨機応変に、術策を変える」とは、橋下氏のことをよく知っているものだと、感心しました。
面談自体が、橋下氏に「政治利用されかねない」との心配もあったようで、これまた橋下氏ならやりかねないことを、鋭く察知していると思います。
「慰安婦発言」だけではなく、氏の言動は今までも、多くのことが話題になり、世間をさわがせてきましたが、未だ根強い橋下支持者がたくさんいるのは驚きです。
そしてその橋下好きには、「自称インテリ」が多いのではないかと、私は感じています。
「橋下はやり方など問題はあるし、全部は賛成しないけど、言っていることは理解できるなぁ」
「だから私はけっこう橋下が好きだし、期待している」
こんな具合に、全部は認めていないことを前提に、他の政治家にはない橋下氏の強烈な個性を「私は理解できる」と、通ぶっているのです。
確かにあれほど自信満々に独自の意見をズバリという人は、橋下氏以外にはあまりいません。
なるべくあたりさわりのないことばかりいう他の政治家に比べたら、魅力的に感じるでしょう。
だから多少問題があっても、独創的な意見をちゃんと理解して評価すするのが、分別のある人間である。
これが、橋下氏が好きな人の多くが、思っていることなのではないでしょうか。
もしそうであるなら、そう思っている橋下好きこそ、物事を大きい立場で見れない、分別のない「ニセインテリ」であると言えるでしょう。
なぜなら、少し深く掘り下げれば、橋下氏の考えが、いかにちっぽけな人間性から発しているのかが、すぐに分かるからです。
以下に、「慰安婦発言」を、少し広い視野から見てみたいと思います。
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橋下氏の「慰安婦発言」は、国内のみならず、世界にまで波紋を及ばしています。
その波紋がとても大きく、深刻化しつつある以上、海外の声に耳を傾けぜるをえないでしょう。
中でも、とにかく日本はキライだというような「感情論」ではなく、それなりの識者の方が述べた発言は、真摯に受け止めなければなりません。
アメリカン・エンタープライズ政策研究所客員研究員の加瀬みき氏(米国在住)は、橋下氏の発言は、日米関係を傷つけるものであると、大きな懸念を抱いています。
加瀬氏の寄稿を元に、アメリカからみた「橋下発言」の印象を、まとめたいと思います。
総じてアメリカにおける日本のイメージは良く、日本の最先端技術、日本人の礼儀正しさ、親切さ。特に東日本大震災の被災者の忍耐力や助け合いの精神など、アメリカ国民は大きな敬意を抱いています。
ところがこうした日本の素晴らしいイメージを大きく損ねたのが橋下氏の「慰安婦制度は必要だった」という発言で、アメリカで計り知れない不快感や怒りを生んでいるのです。
アメリカ人は人権問題に敏感に反応しますが、それは「自分たちが潔白」というおごった気持ちからではありません。
奴隷制度はアメリカ国家の良心に深い傷痕を残しており、女性差別や米軍内の性犯罪も頻繁に起こるものの、人間としての尊厳や権利の重要性への認識は強く、遠い国の人々の人権のためでも、体を張って戦う気概を持っています。
実際にアフガニスタン戦争では、多大な犠牲を払いながらも、多くの女性の人権を取り戻し、教育や職、独立の機会を与えています。
もう二度と、人権侵害の愚は繰り返さない!
もし人権を侵害しようとする行為があれば、命を賭けて戦う!
これがアメリカ人の気概なのです。
そのアメリカ人が、
「強制された従軍慰安婦はいなかった」
「制度は必要悪だった」
などと、日本の指導的立場にある人が堂々と述べ、心ある人から糾弾されても
「事実を言ったまでで、撤回はしない」
といってのける橋下氏に嫌悪を感じても、不思議ではありません。
国務省のサキ報道官は、朝日新聞記者の質問に対し、橋下氏の発言は
「言語道断、不快」
と、明確に答えています。
また、マイク・ホンダ下院議員は、
「歴史、人類、そして精神的、肉体的、感情的、性的に残忍な暴力を振るわれた若い女性達を侮辱するものである。
日本政府がはっきりと、疑いの余地のない明確さをもって歴史的責任を公式に認め、謝罪し、受け入れる必要があることを証明している!」
と、怒りを爆発させています。
他にも日本を糾弾する声は多く、日本がなぜ、日米関係やアジア諸国との関係を悪化させる言動をとるのかと、困惑が広がっています。
ともあれ日米同盟は、両国にとって欠かせない重要な関係です。
北朝鮮の脅威、中国とアメリカやアジア諸国との経済・政治、領土、サイバー上の緊張のたかまりの前に、ますます日米の協力関係が必要になってきています。
橋本氏は、関係を強化することに尽力しこそすれ、悪化させてどうするのか!
特に北朝鮮の核問題では、アメリカ、日本、韓国の結束、そして中国の協力がなくしては、解決の糸口さえつかめません。
ところが橋下氏の発言によって、日本とアジア諸国の関係、そして日米同盟をも危険にさらしているのです!
まったく橋本氏は思慮が浅く、国際感覚が乏しい上に、人間としての器も小さい。
まさに周りの空気をよめずに、屁理屈を言ってからんでくる、たちの悪い酔っ払いと変わらないのです。
「なぜ今、もっとも大事な時に、日本は近隣諸国との関係を悪化させる発言をあえてするのか?」
このように、アメリカ政権やアジアの専門家は、怒りとともに困惑していることを、正しく認識しなくてはならないでしょう。
日本は本当に信頼できる国なのか。アメリカが守るに値する国なのか。
まさに、日本はそこまで疑われている現状なのです。
さて、橋下氏好きの「エセインテリ」は、このような国際状況を、どう見ているのでしょうか。
独自の主張を自信満々で出し続ける橋下氏を、「言っていることはわかる」などと、いつまでも通ぶって理解を示すことは、そろそろやめるべきではないでしょうか。